

多面的な創造空間として様々な企画を打ち出すギャラリー。
アートを創る側と観る側のコミュニケーション、コラボレーションを大切にし、
地域に根づいたアートスペースを目指します。

全国各地の福祉施設や作業所では、障がいのある人たちの表現(創作)活動は、日々の営みとして、仕事として、または余暇活動として広く行われています。近年では海外からの評価も高く、欧米での展覧会も盛んに開催され、また九州各地の福祉施設や作業所でもこのような活動が盛んに行われ始めています。
障がいのある人たちのアート活動はめずらしいものではなくなってきている現在、単に障がいのある人たちの特性としての「障がい者芸術」と捉えられるのではなく、私たちは、作品を社会にアウトプットすることで、「人」「もの」「場所」「情報」などの『あいだ』をつなぎ、さまざまな立場の人たちを受容できる社会の構築に向けた企画展を行っております。
今回で5回目の開催となる企画展「Life Map」は、2011年12月に作家が被災地(宮城)へ赴き、現地の人々との出会い、コミュニケーション通して制作した似顔絵、絵日記と映像作品を展示します。
震災から10ヶ月が経とうとしている被災地では、さまざまなボランティア活動が行われていますが、現在はコミュニティスペースをつくる動きが高まっています。それは、人と人が対話をする場の構築であり、その対話から他者とのつながりをつくる場であり、また、自らの役割を見出す場でもあります。
滞在した6日間で、現地の方々からは「今では未来に向けての考え方しかしていない」と良く耳にしました。しかし、遠方にいる私たちは未だ「支援」というカタチで被災地を見つめているような気がします。このような状況を突き止めると、いわゆる「障がい者」と「健常者」と同じような関係に感じてしまいます。
つまり、必要なのは「頑張ろう」という掛け声ではないということなのです。
本展は「障がい者」といわれる人々の表現から、「人」や「社会」を主として開催している企画展です。今回は、従来の「福祉/障がい」と「社会」のアイダを超えた、人と人のアイダをつなぐことから“生きる”ことについて見つめなおす時間を提供したいと考えています。
ギャラリーで毎年恒例の企画展。
障がいのある人のアートを通して、芸術と社会の新しい関係を築いていこうとするムーブメントです。
ギャラリーアートリエの公募企画展。
35歳未満の福岡県に在住もしくは通勤通学している個人またはグループを対象とし、「場所」というテーマに基づく企画を募集。
入選者には制作補助費15万円・展覧会開催費15万円を授与し、10-11月の2ヶ月間、展覧会を行って頂きます。

入選者
久門 裕子(福岡県春日市在住、27歳)
企画趣旨
7ヶ月間の記録
ここに存在したことを留めておきたい
父はこの近くの病院に入院していた。
病は重く、長く生きられないことは当人もわかっていた。
そんな中ですごした最後の日々を、私はノートに記録した。
朝起きて、ご飯を食べて新聞を読んで、しゃべったこと。
焼き付けるようにその姿を残そうとした。
そこでの喜怒哀楽の感情や出来事のすべてが、ただいとおしかった。
一人の人間が生きて最期を迎えるまでの記録。
そこにあった場所を切り取ってここに再現する。
書き溜めた日記や絵、立体作品も展示。
見る人が、展示された記憶と同じ空間にいるような感覚を持ってくれればいい。
人と関わって過ごしていく中に、たくさんの思いが存在する。
それは太古の昔から変わらない。
私の記録はとても個人的なものだけれど、万人に共通する思いがあると信じている。
審査講評
本展には22組の応募があった。意欲的な応募企画が多く、審査は難航した。
まず審査の第一段階として応募22組について、審査基準に照らし、吟味、検討した後、投票によって10組に絞り、さらに第二段階としてその10組について審査員の間で議論をした上で、再投票した結果、さらに2組に絞られた。審査の最終段階としてこの2組について議論し、満場一致で久門裕子さんを選んだ。
久門さんは、会場の近くの病院で父親を亡くした。そこで、闘病生活を送る父親を看護する日々の中で、父親の容態、母親の様子、まわりの人びとのことなどを描きとめた。それを展示し、父親が最後の日々を生きた「場所」を再現しようという企画である。ともすれば、暗く重いものになりがちなテーマが、久門さんの手によって、明るく、優しく、暖かなものになっているところが審査員の心を捉えた。与えられた「場所」というテーマに、どうやって近づこうかと、頭で考えた応募者も多かったのだが、久門さんの場合は、自分の表現したいものが、そのまま「場所」というテーマに繋がる内的な必然性があった。そして、なにより、いま「展覧会のかたちで表現しなければならないもの」が、たしかにそこにはあった。その表現したいという熱い思いがもっとも強く感じられたのが久門さんだった。
結局、アートというのは、深いところで「いのち」と関わるものだとわたしは思う。生きようとするいのちを、こころの奥深いところで励ましてくれるものだと思っている。久門さんの応募企画に、いちばん、そういう意味でのアートの可能性を感じた。
審査委員長 後小路雅弘