| 薬師如来の周囲を固める「十二神将」は、信仰する人々をいつ、いかなるときもお守りする使命を持っている。12という数字は仏教で使われる「たくさん」あるいは「全て」を包括する概念であり、また薬師如来が起こした衆生救済の12の大願にも通じる。頭につけた十二支の獣頭は、それぞれの時刻と方角を分担して外敵に対処することを表す。教典によると、1神将につき7000人の助っ人を引き連れて参上するというのだから頼もしい。それにしても干支の獣頭によって、キャラクターとしての魅力が倍増するではないか。兜をかぶった「戌」などまさに映画「スターウォーズ」
のダース・ベイダーである。機敏にして進取の気性に富む「申」はさしずめルーク・スカイウォーカー、世話好きで人望厚い「午」ならオビ=ワン・ケノービなどと勝手な連想でキャラをあてはめて見ていくと、いつしかこの展示室が深遠な宇宙空間へと変わっていく。身長70cmほどの神々が夜な夜なガラスケースを抜け出し、子の刻に睨みを効かせ、あるいは丑の方角を切りつけ、あるいは辰の方角へ矢を放つ。丑三つ時の美術館では、まさに時空を超えたスペースファンタジーの世界が繰り広げられているのかもしれない。
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十二神将
(写真は南北朝時代のもの)
東光院は伝教大師の創建と伝えられ、福岡市内でも最古の由緒を持つ名刹の一つで、天台宗から禅宗、真言宗へと改宗している。藩政時代には黒田家の菩提寺的な役割を果たしたが、明治維新によって経営基盤を失ったこともあり、昭和56年に宗教法人としての活動を停止。これに先立ち、49年に数々の文化財が福岡市に無償譲渡された。薬師如来および十二神将には藤原期のものと南北朝時代のものがあり、いずれも国の重要文化財。福岡市美術館「東光院仏教美術室」ではこれらを定期的に入れ替えて展示する。
藤原期は、日本の木彫り技法が中国や宋の技法をヒントにしながらも日本独自のものとして発展、完成した時代で、モデリングが正確で細部にわたり完成度が高く、美術的評価も固定している。これに対し南北朝時代の十二神将は正統な仏師の作ではないとも言われるように、約束事に縛られない面白さがあり、表情も個性的である。いずれも薬師如来とともに12体すべて揃っているのは全国的にも貴重とされる。
東光院は現在、博多区吉塚3丁目の住宅街にひっそりとあり、境内の見学は自由。 |
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