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人形は3人の遣い手によって操られる。仕掛け糸を自在に繰ってさまざまな表情を表現する主遣い、人形の左手の動きを操る左遣い、そして足の運びを操る足遣い。これら3人の息がぴったり合ったとき、木と布で作られた人形は、生身の人間以上に豊かな感情を見せる。まるで生きているかのように。
「どんな人形でも基本の操作はだいたい同じ。あとは遣い手の演技力ではなかでしょうか。自分の気持ちを人形に移すことができんと、人形はいきいきと動いてはくれません」
今津人形芝居の第一人者、 さんは語る。
絵本太功記十段目の明智光秀を、中村さんがひょいと手に取ってみせた。人形の背中から左手を差し込み人形の背骨である胴串を掴む。光秀がむっくりと起きあがる。とたんに眼孔厳しくこちらを睨みつけ、掴みかからんばかりの勢いで迫ってきた。人形の生命線ともいえる仕掛け糸を、中村さんの指先が自在に操っている。まさに名人芸。テクニックだけではない、感情移入の芸術をかい間みた気がした。
中村さんは今、後継者の育成に力を注いでいる。月に2回、今津公民館で地域の子どもたちに人形芝居を教え、昨年9月からは地元の登志神社の特設舞台で定期公演も始めた。
「私はね、単なる伝統芸能の保存ではなくて、みんなに喜んでもらえる新しい人形芝居をつくっていきたいと考えとるとですよ。現に今、子どもたちに教えとるのは私たちが昔習った人形芝居とは動きや解釈も少し違う。もともとは淡路島から伝わった人形芝居ですが、これからは今津人形芝居の個性みたいなものを大切にしていきたかですね」
保存ではなく、継承し発展させていく。伝統芸能に生きる人の、もうひとつの姿がそこにあった。
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