財団機関誌 季刊 wa
[インタビューズ]時代を超えてかがやく福岡のトラディショナル
◎筑前琵琶 中村旭園 
余韻とはかりあう筑前琵琶
「絃をかき鳴らすと、ひとつの音が波打って響く。
 宙に音をつくるように。その美しさが胸を打つ」
 「筑前琵琶は千年を超える琵琶の歴史の末に、明治時代、博多生まれの橘旭翁(たちばなきょくおう)が創始した近代的な芸能琵琶です。それまで四絃だったものを、弾きやすく音色が多彩な五絃に改良して、歌も七五調のわかりやすい言葉にしました」
  現代筑前琵琶界の最高峰である中村旭園さんはいう。

  博多に生まれた筑前琵琶はやがて全国的なブームとなり、日本の音曲として定着した。だが、栄華も束の間。戦後はしだいに衰退し、一部の専門家が愛好する伝統芸能へと性格を変えてしまったのである。

 「このまま伝統芸能の中におぼれていたら滅亡する。もっと誰もが楽しめるような、今日的な取り組みをせんと生き残っていかれん」
  旭園さんはここ十数年、あの華やかでもの哀しい韻律を再び甦らせるべく、創作琵琶というジャンルに取り組んでいる。ヴァイオリンや琴と合奏したり、舞踊や華道や現代劇とジョイントしたり。伝統芸能の域を超えた斬新な試みに、若い人たちの関心も高まっている。

 「琵琶は絃をかき鳴らすと、ひとつの音が波打つ余韻となって響いていきます。思えば私の琵琶の道も、最盛期以後のはるかな余韻の中を歩んだ気がします」
  橘旭翁が琵琶に新たな道を拓いたように、旭園さんもまた筑前琵琶の新時代を拓こうとしているのである。
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photo by TAKEI HIDENORI
なかむら きょくえん
1917年、福岡市生まれ。
筑前琵琶日本旭会総師範。日本旭会、日本琵琶学協会、筑前琵琶連合会各理事。7歳で高野旭嵐に入門し、11歳で雅号旭園、14歳で五絃教授、22歳で総伝の免状を取得する。1946年に三世橘旭翁直門となり、以来国内はもとより海外各地で公演し絶賛を浴びる。福岡市文化賞、文部大臣賞など受賞多数。1997年には勳五等瑞宝章を授章。年2回の定期演奏会や創作琵琶を発表する一方、若い後進の育成にも傾注している。
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五絃の筑前琵琶は、琵琶独特の情感を強く残しながらも音域を大きく広げた


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「博多町家」ふるさと館(博多区)では、旭園さんが筑前琵琶を始めたばかりのお弟子さんたちに稽古をつける風景が見られる
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