| [クローズアップ・ミュージアム 福岡市美術館] |
|
| ハンマーや斧で鍛かれ、あるいは炎で熱せられた鉄板からは、元の冷ややかな面もちは消え失せている。例えば風雨にさらされて節くれ立った木片に共通する表情や時間の経過を感じさせる。 "鍛く"という行為について阿部守氏は次のように語る。「極めて個人的な"鍛く"という行為を美術の文脈の中にどう普遍化できるか、という試みの繰り返しである」 その手法と作品は、錬金術、身体性、空間といったキーワードで語られる。「阿部が打ちつけたのだ」という肉体的存在を自ら確認すると同時に、発表の場との対話というプロセスを経て、空間に自らの身体性を表現していく。 20歳前後から錬金術に関心を抱いてきた阿部氏は、「錬金術とは、自然の中に宿る"神性"を解放させることだ」と述べている。このアニミズム的な捉え方と理論的に組み上げられた空間に象徴されるように、彼の作品には対立する要素がせめぎ合っていると言われる。 阿部氏が近年、素材として多用するのは亜鉛びき鉄板、いわゆるトタン板である。これを高温で熱すると、表面に白い粉をふいたような見事な亜鉛華(酸化亜鉛)が生じ、この物質を錬金術ではラナフィロソフィカと呼ぶ。 昨年、滞在中の英国オックスフォード大学の博物館でのインスタレーションでも、この白い鉄板が用いられた。フロアの民俗資料はそのままに、という制約の中、阿部氏は、陳列ケースの上に水流をつくるというアイデアを実行した。陳列ケースの上に、一見無造作に置かれた白い鉄片は、吹き抜けになった上階から見ると渦巻き状の水流を形づくっている。静かな水流はフロア全体を包み、博物館は海の風景となった。 新春、福岡市美術館で開催される阿部守展には「白色化-ラナフィロソフィカ」の副題がつけられた。そのタイトルが示すように、熱と力によって鍛かれ、「白い影」を浮かび上がらせた鉄片が、深遠な空間を構成することになるだろう。 |
| 阿部守 1954年、東京都町田市生まれ。福岡教育大学助教授。80年頃から鉄を主な素材とするインスタレーション作品を発表。95年、第7回バングラデシュ・アジア美術ビエンナーレにて最高賞。2000年9月から1年間、英国オックスフォード大学ラスキン美術校に客員教授として滞在。福岡では3年ぶりとなる今回の個展は、この英国での成果も期待される。 「阿部守展/白色化―ラナフィロソフィカ」 2002年1月5日(土)〜3月31日(日) 福岡市美術館企画展示室 入場料(常設展示): 一般 200円 高・大生 150円 小・中生 100円 |
|
|
|
|
| Copyright 1999 Fukuoka City Foundation for Arts and Cultural Promotion. |