INTERVIEW 山田うん インタビュー

山田さんは今年、文化庁文化交流使として11カ国23都市を巡られました。その旅の途中で「日本人にとっての踊り」について、なにか考えましたか?

山田 : 盆踊りが浸透していたように、実は日本人は踊りが身近にあった民族なのではないかと思っています。世界には、歴史のない国や、戦争などで踊っている場合ではない国も多くて、踊りを持ち続けてこられた日本は、豊かな国だなと感じました。

世界で踊っていて、印象的なエピソードを教えてください。

山田 : バレエのディレクターから「どうしてそんなに足音を立てずに着地できるのか?」と驚かれたことがありました。私にとっては特別なことではなかったのですが、考えてみれば、それは私が、靴を脱いで裸足で生活をし、小さい頃から足音を立てずに歩くようにしつけられた日本人だからかもしれません。私自身、日本人の手足の短さや身体の重心の低さなどを、積極的にダンスに取り入れています。
 また、エストニアで踊った時のことです。見に来てくれたおばあさんが、泣いてハグしてくれました。「あなたの感受性や肉体が持っている記憶のようなものは、私たちとすごく似ている」と言って。エストニアは海や川や森がたくさんある自然の豊かな小さな国で、日本と自然環境が似ているんです。ふだんそんなに自然のことを意識して生活しているわけではないけれど、私も日本の自然と知らず知らずつながって、その風景を創作の中に落とし込んでいるのかな?と感じた出来事でした。

なるほど。おもしろいですね、具体的に模写をしているわけではなくても、通じ合うものがあるということですね。

ブログなどの文章もたくさん書かれていて、それも山田さんならではの感性が満ちています。
踊りと文章はどんな関係にありますか?

山田 : 踊りを踊っていても、自分のことを見ていないんですよね。自分が何を考えているのかわからない。例えて言うと、一人ぼっちの部屋にいるようなもの。そこに友達が来ると、自分が何を考えていたのかハッキリすることがありますよね? 文学や自分の書いた文章は、その友達のような存在で、まるで鏡のように自分の踊りを映し出してくれます。

さて、今回の公演の「モナカ」というのは不思議な名前ですが、由来を教えてください。

山田 : 漢字では「最中」と書きます。これ、「もなか」とも「さいちゅう」とも読めるでしょう? 作る時には時間のことを考えていました。とても抽象的な表現ですがダンサー16人がまるであんこの粒のように存在して、それを音楽という皮で包んだような、和菓子の「もなか」のような構造を持ちながら、時間の真っただ中、「さいちゅう」という一瞬を表せないだろうか? そんなことを考えました。
 そのために、ダンサーが一つひとつ独立した粒である感覚を持ちながら、でも時には全員が一個の塊になったり、また分解したり。たった1分の中にも時間が凝縮されています。60分×16人分と考えると、膨大な表現ができます。それを、ドカン!と一瞬で表せるような、勢いのある公演にしたいと思っています。

音楽も重要なファクターですね。

山田 : そう! 「モナカ」では、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」という曲をオマージュとして使っています。ずいぶん解体しているので、どこが?と思うかもしれませんが(笑)。パヴァーヌは、行列舞踊といって王宮で行列が行進していくような踊りです。この作品では、同じモチーフが4回繰り返される中で、少しずつ列が物語を作っては、返し縫いのように戻って、再び物語をつくっていく様を、踊りの軸にしています。

ダンスを観るのが初めてという人に、見どころを教えてください。

山田 : そうですね。ダンスは「見える音楽」「動く絵画」「身体で感じる美術館」のようなものだと思っています。そして、観ただけで一緒になにかを体験した感覚を持つことができると思います。なんと、私たちのダンスを観て、ジョギングを始めた人がいたくらい(笑)。それほど身体に直接影響する、人のある部分に触れることができる芸術だと思います。

福岡での公演を楽しみにしています。

山田 : 福岡に16人ものダンサーを連れて行くのは初めて! 福岡や山口出身のダンサーもいます。福岡ってほっこり温かい街という印象があって、私達のカンパニーと相性がいい予感がしています。
 音楽がかっこいいのでそれを聴きに来ても良いし、お気に入りのダンサーを探しても良い。きっとどこか心に触れる部分があると思うので、自由に楽しんでください。お客さまとの出会いが今から楽しみです。